本を引く

とても焦っていた。焦っていることに気付けるようになったことはとてもいい。本屋に出かけた。目当ての心理学の読み物を探しに。タッチパネルでタイトルを入力して、レシートタイプの紙を出力した。棚に向かった。見つけられなかった。注意障害ゆえによくあること。目に見えるものがゴミのように頭に溜まっていく。そのガラクタに覆われて、必要なものが見えない。嫌気がさしたり、苛立ったりももうしなくなった。これはわたしの機能のうちのひとつ。そこから離れればいい。そうすると、完全に目的から遠く離れることになるのを、かつての私は怖れていた。かつて、ではないかな。油断すればいつでもそんなふうに戻る。びくびくする。自分に。ただ、今日は焦らないし自分にいちいち一喜一憂しない、そういう調子の日だということ。自分を眺めることに少しは慣れた。平坦な人が自分の一枚外側にいる。この平坦さんは、実は経済的な支援を受けてここに現れた。わたしは平坦さんと仲良くなった。もう5年ほど交際が続いている。この人と交流すれば、私も平らになる。少し遠くに、まあるく覆っていて、ふと、助けにくる。この文章も平坦さんが支援している。だらだら打て。そのワンフロアしかない頭の中に落ち散らかっている不純なものを、指の運動をともなってカタカタだらだら垂れ流してみな。決めなくていい。どうせきまらない。

棚の間を、無数の背表紙を眺めながら歩いた。人が点在していて、蛇行する。目的の書籍を探そうとする意志はかき消されなかった。もどった。でも、無い。みつからない。あきらめようかと思いつつ、惰性で背表紙を順番にたどる。ふと、気になる言葉にであった。

心と身体のあいだ

そのタイトルは、私のこびりつて離れないあることとすっと同化した。このことを私は身体でしっているはずだと思った。

平坦さんが、消えた。なにかが冴えた。買った。

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